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PayPayが加盟店手数料を有料へ転換。店舗はどう対応するのか。

2021.04.03

【追記:2021.8.21】PayPayから正式に決済手数料の案内が出ましたので、別記事「PayPay有料化の詳細が明らかに。店舗はどう動くのか。」で解説をしています。経緯よりも手っ取り早く結果を知りたいという方は先にご覧ください。

当社が運営しているイタリアンレストラン「トラットリア・トリニータ」でPayPayによる支払いを受付けていることから、PayPayより「PayPay決済システム利用料の有料化について」という案内のメールをもらったため、軽くツイートしたところ、多くの反響をいただきました。

私自身、キャッシュレスについては強い思い入れがあり、自社サービスでは当然のことながら、その動向についても注目している方です。過去にスマートフォンを開発して販売していたこともあり、その時にもおサイフケータイをどうしても搭載したいという決意があり、当時はキャリアから販売されていないSIMフリースマートフォンとしては初めて、おサイフケータイに対応して発売しました。

過去の記事ですが、キャッシュレスについての記事もメディアに書いたことがありますので、もしお時間があれば読んでいただければと思います。

PayPayがQRコード決済で市場を席巻した理由

PayPayはキャッシュレス決済の中でもコード決済型、いわゆるQRコード決済のシステムとしては圧倒的なシェアを誇っています。ちょうど先日PayPayサービスを手掛ける親会社のZホールディングスとLINEの経営統合により、LINE Payとも統合されるということがあり、公正取引委員会が総合的に合併について審査をした結果が公開されています。

Zホールディングス株式会社及びLINE株式会社の経営統合に関する審査結果について(公正取引委員会)より

ここから見ると、PayPayだけで55%、LINE Payを加えると60%ものシェアを握ることになりますので、第2位が15%だと考えると、「圧倒的」なシェアであるといえます。たしかに、一般消費者目線で見ても、PayPayが使えるところが目立つのは確かです。現金もしくはキャッシュレス決済はPayPayのみという、街のそば屋さんなども多くあります。店舗にとって現金のみの決済だったところからPayPayを導入するメリットとしては大きく分けて下記の点があると思います。

  1. 導入費用や月額手数料、決済手数料が無料であること。(※一部除外規定あり)
  2. 入金サイクルが比較的短く、振込手数料が無料なこと。
  3. ユーザーがQRコードを読み取るタイプの場合、特別な機器の設置や操作が必要ないこと。
  4. PayPayが実施するキャンペーンなどにより送客効果があること。

店舗側からすれば、現金とそれほど変わらないオペレーションで、キャッシュレスを望むユーザーの要望に応えつつ、現金管理などの手間を減らせるようになるので、私などは導入しない理由がまったくなかったので、店舗のオーナーとして即導入を決めました(いろいろあって少し開始は遅れましたが)。その後にキャッシュレスポイント還元事業なども始まったりして、それを追い風に一気に普及が加速されていきました。

これに加え、見えないところとしてはソフトバンクグループの営業チームがものすごい人数で店舗を訪問し、上記のメリットを伝えて導入までの支援を行なっているところも大きいです。これは膨大な金額の投資がかかるので、一般的な企業には実行することができません。

PayPayの決算だけを見てみると恐ろしいことに営業利益が834.6億円の赤字です。これらはすべて先行投資によるもので、現時点では広告宣伝費やコストの方が圧倒的に上回っている状態です。それでも、上記のような加盟店を増やす施策と合わせて、ユーザーに対して常に色々なキャンペーンを実施して認知度のアップや利用を増やすようにしてきました。

ソフトバンク株式会社 2021年3月期 第1四半期 決算説明会」より

結果として、55%ものマーケットシェアと上記のような数字を作り上げました。たった2年程度でこれほどまでのプラットフォームを作り上げたのは、ソフトバンクにしかできないことなのではないかと思います。

PayPayの収益はどこで得るのか

当然ながら、PayPayは慈善事業をやっているわけではなく、将来に向けての先行投資です。どこかで収益を得ていき、黒字化していかなければいけません。これまでのキャッシュレス決済では、加盟店からの手数料収入を収益としてビジネスモデルを成り立たせてきました。

ソフトバンク株式会社 2021年3月期 第1四半期 決算説明会」より。PayPayプラットフォーム戦略も含めて営業利益1兆円へ、という目標を掲げています。

しかしながら、日本のキャッシュレス決済が普及しない理由のひとつがここにあると言われてきました。現在、当社でもクレジットカードやSuicaなどのICカード決済では3.25%前後の手数料を支払っており、PayPayのみが手数料無料となっています。1,000万円の売上がすべてクレジットカード決済になると、325,000円が経費となります。特に飲食店は原価と人件費、家賃などの諸経費を引いた営業利益は概ね5%〜8%程度と言われていますので、そこに3.25%のコストが増えるとなると1.75%〜4.75%の利益となります。

カード決済手数料や利用料」より

それでも利益が出ると思われるかもしれませんが、この1.75%〜4.75%が損益分岐点となりますので、たとえば1.75%であれば、1.75%売上が下がれば即赤字になります。飲食店であれば、消耗品や店舗の修繕が発生することもありますし、コロナ禍で言えば売上が1.75%程度の減少で済んでいるところというのは相当少ないのではないでしょうか。

前提が長くなりましたが、つまり加盟店からすると、他のキャッシュレス決済は導入したくないけれどもPayPayならば導入しても良いと考えた最大の理由は、手数料無料なのです。PayPay側のキャンペーンにより送客してもらうなどの副次的な効果はあるにせよ、本命中の本命は手数料だったのです。

PayPayも手数料を有料化することを視野に入れていたとはいえ、これによる加盟店の離脱がどれくらいあるかというのが戦略を決める上で最大の検討事項だったと思います。私としては、3%が3.25%になるとかそういう変動と、0%が仮に3.25%になることのインパクトは大きいと思っています。

手数料以外の収益の道

私個人は、PayPayは小規模事業者(現在の区切りは売上高10億円)については手数料無料を続けた上で、PayPayというプラットフォーム上で決済することができる場所を圧倒的なシェアで持っている強みを活かして、収益を上げていくのだと思っていました。

Paypaystrategy1.png
ソフトバンク株式会社 2021年3月期 第1四半期 決算説明会」より
ソフトバンク株式会社 2021年3月期 第1四半期 決算説明会」より
ソフトバンク株式会社 2021年3月期 第1四半期 決算説明会」より
ソフトバンク株式会社 2021年3月期 第1四半期 決算説明会」より

前述の「ソフトバンク株式会社 2021年3月期 第1四半期 決算説明会」の資料においても、PayPayプラットフォーム戦略が示されています。金融サービス、モバイル、eコマースの分野において、PayPayというプラットフォームを活かして、シナジー効果によりすべてのビジネスの収益を上げていくことが戦略です。

ただ、その場合に重要なのがユーザーです。現在、PayPayが使える状態をかなり広く提供していますが、これが手数料を有料化して離脱が増えていくと、PayPayを使える場所が減り、ユーザー体験が悪くなるとユーザーは減っていきますので、このプラットフォーム戦略に支障をきたす可能性があります。

ポイントは2つで、1つ目は手数料をいくらにするのか。現在の3.25%程度に引き上げることはあまり考えられませんが、どれくらいに引き下げて打ち出すのかは注目です。

PayPayシステム利用料をいくらに設定するのか

折しも、クレジットカード決済最大手のVISAそして、Masterがそれぞれ2.7%前後に引き下げる施策を発表しています。それよりも下げるのか、同等にするのかというところでも大きな分かれ道があると思います。

現実としてPayPay側のコストで考えると、おそらく全体の取扱い規模からするとシステムのコストというのはあまり大きな割合を占めないのではないかと想像しています。

PayPayでは大きく分けて2つの決済方法があり、PayPayにあらかじめキャッシュを入れておく方式(銀行口座連携含む)と、クレジットカードを紐付けての決済です。基本的には前者はPayPayにとってほとんどコストではないはずなので、後者がクレジットカード会社への手数料支払いがあるためにコストが大きくなると思います。

加えて、ユーザーに還元するポイントです。現在はYahoo! のカードなどの自社グループのカードで1.5%、一般的なクレジットカード決済だと0.5%を還元していますので、ここがコストになります。

クレジットカード会社への手数料支払いがいくらになるのかは想像もつきません。もしかすると現在既に手数料を徴収している10億円以上の企業向けの手数料が目安になるのかもしれませんが、私はそれを知ることができません。

なんとなくではあるものの、ポイント還元の最大が1.5%ですから、ここが下限になりそうな気がしています。PayPayマネーやYahoo!カードの利用はここらへんの数値で、クレジットカード決済の場合には2.7%を上限としたギリギリのところあたりになるのかもしれません。2.7%は競合との競争に勝つためで、ここではコストは完全にカバーできないのかもしれませんが、さすがに競合よりも高くすることは難しいのでは無いかと考えたのが根拠です。

圧倒的な普及と有料化時の施策により加盟店の離脱は少ないと見ているのかもしれない

もうひとつのポイントは、手数料が有料化したとしても加盟店は止めないのではないかということです。現在の普及率や、すでに利用者がいる店舗が、これを止めるまでにいたるかどうか。前述のように手数料は損益に大いに影響を与えるコストですから、できればない方が良いと考えるのは普通です。

特に大半の店舗では導入が簡易なQRコード読み取り式ですので、設備投資もしていないことから自店舗に割り当てられたQRコードを撤去するだけで終わります。導入が楽な分、撤去も楽なので、離脱コストが少ないので懸念点だと思います。

しかし、それを上回る一大キャンペーンを打ち出して、来客が増える分を考えれば当面続けようかと思うようにする可能性が高いと思っています。そして、決断をする時期を延ばすと、特に飲食店でいうとシェフ兼オーナーなどはかなり忙しいので、その後にしっかりと再検討することなく、そのまま続ける可能性があります。

後半は想像だけの話になりましたが、PayPayのシステム決済利用料有料化は、キャッシュレス決済に大きな影響を及ぼす一大イベントとなりますので、手数料の案内を待ちたいと思います。ちなみに、当社としては既存の手数料を超えないのであれば継続するつもりでいます。

このブログを書いたスタッフ

プレジデント

ほっしぃ

音楽からMacの道に入り、そのままApple周辺機器を販売する会社を起業。その後、オリジナルブランド「Simplism」や「NuAns」ブランドを立ち上げ、デザインプロダクトやデジタルガジェットなど「自分が欲しい格好良いもの」を求め続ける。最近は「24時間365日のウェアラブルデバイス|weara(ウェアラ)」に力を注いでいる。

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